森 重文(京都大学数理解析研究所教授)
フィールズ賞1990年受賞
研究について述べたい。
研究者は研究費の申請のために研究計画を作るが、計画と実際の研究の進み方 にいかに大きな食い違いがありうるか、理解されているのだろうか。大きな発見
や発展は、方針転換したときや、極端な場合としては、間違いや失敗がきっかけ になって、起こったりする。何人かの高名な科学者が、何かの失敗が大発見のき
っかけだった、と発言するのを最近も耳にしたが、自分でも実際に同種の経験を した。自分には、むしろその思いがけない瞬間に巡り会いたくて、地道な研究を
続けているという思いすらする。
また、方向が決まった後でも、結果を出せずに数年以上の時間がかかった後、 何かをきっかけにして急に解決するということも、経験した。
このように大きな食い違いが生ずることがあるが、それでも、研究者は研究計 画は立てるのである。ただ、食い違いが生ずるものだということをわかった上で
運営に余裕をもたせてほしいのだ。大学が法人化されれば、研究者個人が研究費 を申請するのとは別に、各研究機関も中期計画を立てて審査を受けるようにな
る。
一つの研究機関全体が中期計画を立て、数年後に計画の成果を評価される状況 になったら、研究者はそれでも野心的な試みを続けられるのだろうか。
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フィールズ賞:数学界のノーベル賞ともいわれる。日本人では、小平邦彦、広中平祐、森重文 が受賞。
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