2003年2月12日
佐賀大学長 上原春男殿
佐賀大学教職員組合委員長 白武 義治
本年1月31日の国立大学協会法人化特別委員会に文部科学省が提示した「国立大学法人法案の概要」について、当組合は以下のような見解を提出します。貴職におかれましては、この見解を学内からの強い意見と認識され、文部科学省および国立大学協会に対して国立大学法案の撤回の要求も含め、強く発言されることを要望します。
法案概要では、文部科学大臣が中期目標を定め、中期計画を認可することとなっており、国立大学法人の自立性・独立性を高めるどころか、文部科学大臣による統制強化が図られている。さらに、学長を中心とする中央集権的な組織を設定しているため、学長の裁量権が強すぎる。我々は、質の高い教育研究を保障する自由闊達で民主的な大学自治を維持向上させ、人類の福祉と世界平和に寄与する大学の社会的役割を果たすためにも、また教職員の権利擁護・地位確立の立場からも、このような法案は絶対に容認できない。この法案の概要に沿って国立大学の法人化が進められるのであれば、我が国の学術・文化と国民の教育に対して取り返しのつかない深刻な事態を招くことは明らかである。
対案:このような極めて問題のある国立大学法案の撤回を要求すること。
大学における教育研究の質の向上・人材交流の活性化など大学に科せられている諸課題は、現行の大学制度の中で改善できるのであって、すでに大学の自己点検・自己評価や学部評価の制度は整備されつつある。むしろ我が国が「科学技術立国」として今世紀の発展を図るには、教育研究基盤の充実や、国際的にも高額の授業料の改善、奨学金制度の充実など、改善すべき点は他にある。
2.法案概要の具体的内容について
百歩譲って、法案に対する問題点を指摘し、対案を提示するならば、以下のようである。
(1)文部科学大臣による管理統制の強化に関して
法案の概要では、「文部科学大臣は、6年を期間とする中期目標を定め、国立大学法人に示す」とあり、国立大学への管理統制が極めて強化される制度となっている。「あらかじめ、国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮しなければならない」としているが、権限の大幅な強化に変わりはなく、大学の自主性、自立性が著しく損なわれることは明らかである。従来、国立大学への行政の関与は物的整備にのみ限られており、その時々の国の政策や方針に左右されない教育研究の遂行こそが、国民から大学に信託された責務である。
対案:
【原文】
6 学長は、次の事項について決定する際には、役員会(学長及び理事で構成)の議を経なければならない。
(1) 中期目標についての意見(=原案)、及び年度計画
(2) 文部科学大臣の認可・承認を受けなければならない事項(=中期 計画など)
(3)予算の編成・執行、決算
(4) 重要な組織の設置・廃止
(5) その他役員会が定める重要事項
22 文部科学大臣は、6年を期間とする中期目標を定め、国立大学法人に示 す。
中期目標は、
(1) 教育研究の質の向上に関する事項
(2) 業務運営の改善及び効率化に関する事項
(3) 財務内容の改善に関する事項
(4) 自己評価や情報発信に関する事項
(5) その他の重要事項を定める。
文部科学大臣は、中期目標を定めるに当っては、あらかじめ、国立大学法人の意見を聴き、当該意見に配慮しなければならない。
23 国立大学法人は、中期目標に基づき、中期計画を作成し、文部科学大臣の認可を受けなければならない。
【修正案】
6 学長は、次の事項について決定する際には、役員会(学長及び理事で構成)の議を経なければならない。
(1) 中期目標及び年度計画
(2) 文部科学大臣に示すべき事項(=中期計画など)
(3) 予算の編成・執行、決算
(4) 重要な組織の設置・廃止
(5) その他役員会が定める重要事項
22 国立大学法人は、6年を期間とする中期目標を定め、文部科学大臣に示す。
中期目標は、
(1) 教育研究の質の向上に関する事項
(2) 業務運営の改善及び効率化に関する事項
(3) 財務内容の改善に関する事項
(4) 自己評価や情報発信に関する事項
(51) その他の重要事項
を定める。
23 国立大学法人は、中期目標に基づき、中期計画を作成し、文部科学大臣に示す。
(2)国立大学法人が国立大学を設置する制度の弊害
法案の概要では、国立大学法人が国立大学を設置すると規定しており、国立大学法人が国立大学を管理運営する組織として位置づけている。しかも学長への権限集中が強大なものとなっているため、国立大学は単なる下請けのような組織として扱われている。これはとうてい、独創性と自立性に満ちた教育研究を遂行するための制度にはなっていない。これは、国大協が強く主張していた点でもある。
対案:
国立大学の設置者を「国立大学法人」とせず、「国」とする。
学校教育法第2条の以下の下線部の修正を行わない。
学校は、国(国立大学法人を含む。)、地方公共団体及び学校法人のみが、これを設置することができる。
(3)学長の権限が強大すぎることについて
(3-1)学長権限の過大な集中
法案概要では、国立大学法人の中心的組織である役員会、教育研究評議会、及び経営協議会の議長をすべて学長が担うこととしている。しかも、役員会の理事の任命、教育研究評議会の役員の指名及び職員の任命、経営協議会の役員の指名、学外委員の任命など、これら組織の主要な構成員の決定権を学長が持つ制度となっている。さらに、学長選考会議のメンバーの多くが学長によって任命される委員であり、学長も委員になりうるという奇妙な制度となっている。これでは、学長の長期独裁体制を可能にする制度であり、その弊害は計り知れない。
さらに、学長に対するチェック機構に関しても、極めて不備である。学長選考会議が学長の解任について文部科学大臣に申し出ることが出来るとあるが、当の学長選考会議が学長の強い影響力下にあるため、自浄作用は望めない。
(3-2)学長の選出方法の問題点
学長の選出に際して、大学構成員の参画が大幅に制限されており、大学構成員の意志を反映する仕組みとなっていない。大学は営利企業ではなく、自主独立した組織であり、学長は大学構成員の信託を受けて着任するべきものである。さらに、学長選考会議の委員として、教育研究評議会の代表者と同数の学外委員を入れることと規定されている。教育研究評議会の代表者や理事にも学長指名の外部役員が入る可能性があり、学長選考会議における学外委員の占める割合は少なくとも3分の1、場合によっては過半数となることがあり得る。学外委員は、広く国民の意見を大学に採り入れる上で重要であるが、大学の教育研究の実状に通じていない学外者が多数を占めた場合の弊害は大きい。
対案:
【原文】
(学長の任命)
15 学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行う。
16 15の国立大学法人の申出は、
(1) 経営協議会の学外委員で経営協議会から選出される者
(2) 教育研究評議会の代表者
が各同数で構成される「学長選考会議」の選考に基づき行う。
(1)及び(2)のほか、学長選考会議の定めるところにより、学長又は理事を加えることができる(ただし、学長選考会議の委員総数の3分の1以下)。
(理事及び監事)
17 理事は学長が、監事は文部科学大臣が任命する。
その際、現に当該国立大学法人の役員又は職員ではない者(学外者)が含まれるようにしなければならない(=学外役員)。
(役員の任期)
18 学長の任期は、2年以上6年を超えない範囲内で、学長選考会議の議に基づき、各国立大学法人が定める。
理事の任期は、6年を超えない範囲内で、学長が定める(ただし、学長の任期を超えてはならない)。監事の任期は、2年とする。
19 文部科学大臣は、心身の故障、職務上の義務違反、業績悪化等の場合には、学長選考会議の申出に基づき、学長を解任することができる。
学長は、心身の故障、職務上の義務違反、業績悪化等の場合には、理事を解任することができる。
【修正案】
(学長の任命)
15 学長の任命は、国立大学法人の申出に基づいて、文部科学大臣が行う。
ただし、学長の選出方法は国立大学法人が定めることとする。
16 削除
(理事及び監事)
17 理事は、教育研究評議会が推薦し学長が、監事は文部科学大臣が任命する。
その際、現に当該国立大学法人の役員又は職員ではない者(学外者)が含まれるようにしなければならない(=学外民間役員)。
(役員の任期)
18 学長の任期は、2年以上6年を超えない範囲内で、各国立大学法人が定める。
理事の任期は、6年を超えない範囲内で、学長が定める(ただし、学長の任期を超えてはならない)。監事の任期は、2年とする。
19 文部科学大臣は、心身の故障、職務上の義務違反等の場合には、教育研究評議会の申出に基づき、学長を解任することができる。
学長は、心身の故障、職務上の義務違反等の場合には、理事を解任することができる。
(4)ボトムアップの保障について
法律の概要では、大学構成員の代表が国立大学法人の運営に参画する仕組みがほとんどない。わずかに、教育研究評議会メンバーに学部長、研究科長、及びその他の長が規定されているのみであり、学内の意見を反映しうる仕組みが極めて貧困である。さらに、経営協議会では、学外民間委員が過半数を占めるよう規定されており、経営に明るい専門家を学外から招くという以上の強い影響力を持たせるようにしていることは、大きな混乱を招くおそれが大きい。
対案:
【原文】
8 経営協議会は、
(1) 学長
(2) 学長が指名する役員及び職員
(3) 教育研究評議会の意見を聴いて学長が任命する学外民間有識者
(=学外委員)
で構成され、(2)の学外委員が2分の1以上でなければならない。
12 教育研究評議会は、
(1) 学長
(2) 学長が指名する役員
_ 学部長、研究科長、附置研究所長その他の重要な教育研究組織の長で教育研究評議会が定める者
(3) その他教育研究評議会が定めるところにより学長が任命する職員
で構成される。
【修正案】
8 経営協議会は、
(1) 学長
(2) 学長が指名する役員及び各学部の推薦にもとづき学長が任命する職員
(3) 教育研究評議会の意見を聴いて学長が任命する学外有識者(=学外民間委員)
で構成され、(3)の学外民間委員は3分の1以下とする。
12 教育研究評議会は、
(1) 学長
(2) 学長が指名する役員
(3) 学部長、研究科長、附置研究所長その他の重要な教育研究組織の長で教育研究評議会が定める者
(4) その他、各学部の推薦にもとづき学長が任命する職員
で構成される。
以 上